ナイアシンという名前を聞いたことがあるでしょうか?
数年前、イギリスでナイアシンが妊娠率を上げるという発表がありました。
それではナイアシンをご紹介します。
ナイアシンにはビタミンB3とも呼ばれ、ニコチン酸とニコチンアミド(別名ニコチン酸アミド、ナイアシンアミド)の2つがあります。
ニコチンアミドはNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)あるいはNADP(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)として、糖代謝や脂質代謝、アミノ酸代謝における多くの酸化還元酵素の補酵素として機能しています。
最近、医療、美容業界では「NMN」という栄養素が注目をされています。
これはニコチンアミドモノヌクレオチドといい、体内に入り、NADに変換され、エネルギー代謝に関わるものです。
クリニックでは点滴にて直接血管内に入れていきますが、最近は効果が少ないというデータがあります。
経口摂取の方が効果的とのことです。
話を戻しましょう。
どうやらナイアシンは体内の代謝に大きく関わっていることが推測できます。
初めに、代謝の重要な役割を担っている酵素と補酵素についても触れておきます。
酵素とは、人体に3000種類以上あるといわれています。
主な性質は
・身体で起こる化学反応に対して触媒として機能する分子
・体内で作り出されるタンパク質をもとに構成
・生物が物質を消化・吸収・分布・代謝・排泄に至るまでのあらゆる過程に関与
です。
私たちが生きるのに欠かせないものだということです。
酵素と言ってもたくさんの種類があり、唾液や胃液にある消化酵素やカタラーゼという活性酸素を分解する酵素、DNAの複製や修復をするDNAポリメラーゼなど多岐に渡ります。
『酵素栄養学』という少し偏った栄養学がありますが、少しここで紹介します。
・一生のうちで作れる酵素の量(潜在酵素)が人によって決まっていて、食べ物に含まれる酵素(食物酵素)を食べて補うと「潜在酵素」の消費量を節約できるので寿命が延びる
・酵素を栄養の一種として考え、酵素が不足することが万病の元になっている
・酵素は加熱すると変性するので加熱した食品よりも非加熱の食品を食べる方が体に良い
・発酵食品には酵素が多く含まれるから食べると体に良い
各細胞は酵素を作る遺伝子を持ち、存在し続ける間は酵素を作り出すことが可能です。
酵素が入っている食べものをとっても、タンパク質である酵素は胃腸で消化され、アミノ酸になり、門脈を通り、肝臓へ運ばれ、保存されます。
つまり食事由来の酵素は、酵素としての役割を果たすことなく、アミノ酸として吸収されます。
そして必要に応じて全身の各細胞へ送られ、酵素が作られます。
なので飲食による酵素はあまり効果は期待できないということです。
発酵食品を食べても酵素を取り込むことはできません。
※発酵食品に含まれる栄養素は酵素だけではないので食べる価値がないわけではありません。
酵素の構造がタンパク質であれば、胃液の酵素(ペプシン)で分解されることは誰もが分かっているはずですね。
皆さん、だまされないようにしましょう。
続いて、補酵素とは、ある種の酵素は酵素タンパク質と結合して、その酵素の作用に不可欠な働きをする低分子の有機化合物を必要とします。
これらを補酵素(コエンザイム)と言います。
良くわかりませんね。
簡単に言うと・・・
酵素の中には単独では働くことができないので、『きっかけ(補酵素)』が必要だということです。
補酵素の多くは”ビタミン”から生体内で作られています。
特にビタミンB群やナイアシンは生体内でさまざまな酵素の活性発現に必要な補酵素として機能します。
ビタミンがなぜ重要なのかお分かりいただけたでしょうか?
さて前置きはここまでにして、話をナイアシンに戻します。
私たちが食べる動物性食品にはニコチンアミドと酸化型NAD(NAD+)が含まれ、植物性食品にはニコチン酸とNADが含まれます。
動物性食品に含まれるニコチンアミドは体内のあらゆる組織で、NADに合成されます。
しかし、植物性食品に含まれるニコチン酸からNADを合成できるのは肝臓のみです。
また、食品に含まれるトリプトファンからもNADが作られるが効率性は悪い。
約60㎎のトリプトファンからナイアシン1㎎が生成されます。
かなり少ないですね・・・。
ではどの食事にどのくらいナイアシンとして含まれているか、見ていきましょう。
いつものように私の独断と偏見で食材を選んでみました。
一番多く含まれるのは、『舞茸』でした。
舞茸は1パック90gで販売しているようで、約60mgのナイアシンを含んでいることになります。
ただし、先ほどもあったように植物系なのでニコチン酸として含まれているので、肝臓で処理してからニコチンアミドとして利用することになります。
二番手は『タラコ』でした。
おにぎり1個のタラコは10g、小さめの1腹は80gなので、40㎎のナイアシンを含んでいることになります。
こちらは動物性なのでニコチンアミドとして含まれているので、全身どこでも吸収され利用されます。
もう一点、トリプトファン(必須アミノ酸)からNADとなる経路もありました。
ナイアシンも最終的にはNADになるため、こちらも忘れてはいけません。
ただし、トリプトファンからNADになる経路はあまり効率が良くないといわれています。
植物性より魚類、肉類など動物性に多く含まれていることがわかります。
効率良く摂るにはどれが良いか参考にしてみてください。
またナイアシンの性質として、中性、酸性、アルカリ性、酸素、光、熱に対して安定しています。
そのため、保存や調理によって効力が低下することはほとんどありません。
しかし、ニコチン酸やニコチンアミドは水、特に熱水には極めて溶けやすいため、煮物料理をすると煮汁中に70%も移行します。
肉類をから揚げにすると、20~40%程度のニコチンアミドが油中に移行します。
このことを踏まえると、ナイアシンは摂りやすい成分であることが伺えます。
煮物や揚げ物は普段から全く食べませんが、油や煮汁に溶け出すということは、どんだけ食べても過剰症は難しそうです。
それでもしっかり考えなくてはならない摂取量。
どのくらいの量を摂ったほうが良いのでしょうか?
今現在、いわれている推奨摂取量は1日当たり15㎎で、耐容上限量は300㎎ぐらいです。
この数字は一般的な数字ですので、活動量に応じて摂取量は変化させるべきです。
代謝の補酵素として働くなら、代謝量に応じるべきですから。
例えば、運動した、お酒を飲んだ、ストレスを感じた、風邪を引いた、採卵した、移植した・・・
あげればきりがないほど、日々の生活は異なります。
元来は、状態を踏まえていかなくてはいけないと思うんです。
一般的な量についてみていきましょう。
欠乏症は、うつ、幻覚症状、イライラ、不安、精神障害、口内炎、皮膚炎、舌炎、胃腸障害、下痢、ペラグラの症状を起こします。
ペラグラとは、ナイアシン不足に加えて、光刺激で光線過敏症が生じ、顔に左右対称の赤い発疹が出て、、消化管全体が侵されて吐き気、嘔吐、便秘、下痢などの症状が現れ、舌と口に口内炎が生じます。
また、喉や食道にも炎症が起こます。
悪化すると死亡することもあるようです。
ある書物には、狩猟生活から農耕生活によって劇的に増えた病気の一つと書かれています。
やはり人間には動物性食品の摂取が必要不可欠であるということです。
その他の欠乏症はいわゆる「ビタミン不足」でよくある症状です。
微量なビタミンが足りないだけでここまで症状を起こすとは恐るべき能力を持っているということです。
続いては過剰症です。
どちらかというと過剰症というかナイアシンへの反応だと思います。
ニコチン酸の場合かゆみがでること、ニコチンアミドの場合、胃腸障害、肝毒性、胃潰瘍の悪化などが知られています。
私自身、肝機能へ負担があるということからニコチン酸のサプリを500㎎摂っていましたが、飲みはじめた数日は軽くかゆみがありましたが、もう慣れました。
ある人は、痒みがひどかったという話も聞きました。
個体差があるのだと思います。
不妊治療では多くの薬剤を使用して治療に当たります。
薬剤の多くは肝臓で解毒されますので、肝臓はすでに疲弊している可能性があります。
そこにニコチンアミドがさらに肝臓へ負担をかけることがあった場合は良かれと思ったことが悪影響を及ぼしかねません。
どういう形でナイアシンを摂るか、考えなくてはいけません。
ナイアシンは全身で500種もの酵素の補酵素として働いています。
主な働きは
・エネルギー作り
・脂質や糖質の分解
・皮膚・粘膜の炎症を防ぐ
・神経症状を防ぐ
・血管拡張作用
があります。
妊娠に必要な働きとしては、エネルギー作りと血管拡張作用が特に重要です。
受精卵が着床する際、絨毛ができ、そこから酸素と二酸化炭素のガス交換が行われます。
もし、この絨毛が血行不良になり、受精卵に酸素を供給できなくなった場合、受精卵は生きていくことができません。
不妊治療では血行を良くするためにバイアスピリンやヘパリンを使用することがあります。
それだけ血行促進は重要だということがわかります。
そういった薬ではなく、ナイアシンという栄養素には血管拡張作用、つまりは血行促進作用が期待できるので、妊娠率に影響を与えるのだと思われます。
妊活にはナイアシン、覚えて損はありませんね。
市販されているナイアシンには、ニコチン酸とニコチンアミドの2種類のサプリがあります。
先ほども少し触れましたが、血行を促進作用させる働きがあるため、『ホットフラッシュ』という症状が出ることがあります。
ホットフラッシュとは、一過性で顔面紅潮、上半身のほてり、かゆみ症状を言います。
みんなに出るわけではありませんが、ニコチンアミドのほうが出にくいといわれていますので、気になる方はそちらのサプリをお勧めいたします。
ただし、ニコチンアミドは肝臓へ負担になることがあることもお忘れなく。
不妊治療ははっきりいって正解がありません。
少しでも確率を上げるため、不利益を控え、かつ利益の出ることを実践したいですね。
鍼灸治療も血行促進、自律神経を整え、内臓機能を高め、ホルモンバランスを整えます。
ナイアシンと鍼灸はとても相性の良いものです。
是非お試しあれ!!!
銀のすずではその方に合ったサプリメントをおすすめしています。
いつでもご相談ください。
銀のすず